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大阪地方裁判所 平成8年(ワ)8045号 判決 1998年2月27日

主文

一  別紙認容額一覧表の被告欄記載の被告らは、これに対応する同表の原告欄記載の原告に対し、連帯して、同表の認容額欄記載の金額及びこれに対する別紙請求債権一覧表の遅延損害金起算日欄記載の年月日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告らのその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は被告らの負担とする。

四  この判決は、第一項に限り仮に執行することができる。

理由

第一  被告戊田に対する請求について

被告戊田は、原告ら主張の請求原因をすべて認めて、抗弁等を一切主張していないから、原告らの被告戊田に対する請求は、後記第二の四で認定する財産的損害の限度で理由がある。なお、原告らの慰謝料請求が理由のないことは、後記第二の四で判断するとおりである。

第二  被告戊田以外の被告ら(以下「被告ら」という。)に対する請求について

一  当事者(請求原因1)

以下の事実は当事者間に争いがない。

1  原告らの職業、年齢、性別等は別紙被害一覧表のとおりである。

2(一)  被告乙山寺は、昭和六二年五月一三日、被告甲田を代表役員として設立登記された宗教法人であり、茨城県久慈郡《番地略》に本山を置き、東京都台東区《番地略》所在の東京寺務所総務本部を中心に、東京都内及び関東地方に九箇所の末寺を置いていた。

(二)  被告乙野寺は、昭和三一年、和歌山県で認証を受けた宗教法人で、その包括団体は宗教法人「真言宗山階派」であった。

平成四年三月、被告乙山寺の代表役員である被告甲田及び被告乙山寺の幹部である被告丁川が被告乙野寺の責任役員となり、被告甲田が被告乙野寺の代表役員に就任した(なお、平成五年三月に被告甲田は辞任し、被告乙山寺の幹部の一人である被告戊原が代表役員に就任した。)。そして、同月、包括団体の規則が削除され、かつ、目的を被告乙山寺と同じくするように規則が変更された。それにより、被告乙野寺は、被告乙山寺と代表役員も目的も同一の宗教法人となった。

被告乙野寺は、被告乙山寺が建立した高野山伽藍を本拠とし、全国に三〇箇所の末寺を置いて活動していた。

(三)  被告甲田は、被告乙山寺及び被告乙野寺を支配統括している者である。

被告戊原は被告乙野寺の代表役員であり、被告丙川は被告乙山寺の代表役員である。

被告丁川及び被告乙原は、被告乙山寺の役職者である。

被告丙田、被告丁野、被告戊山、被告甲山、被告乙川、被告丙原、被告丁田、被告戊野、被告甲原、被告戊田及び被告乙田は、被告乙野寺の僧侶である。

二  被告乙野寺における霊視鑑定について(請求原因2)

1  争いのない事実及び《証拠略》によれば、次の事実が認められる。

(一) 被告乙野寺は、各末寺名で配布する新聞の折り込み広告や、修行名目で信者が配布する「護符」と称するチラシに、「仕事の心配、病気の苦しみ、子供の悩み、夫婦の危機、将来の不安」、「どんな問題でも、解決のためには根本原因の解明が不可欠です。」、「秘法鬼業鑑定」により「運命低下の原因をズバリ解明!」、「あなたの今の悩みや苦しみの原因」は「因縁、業、霊障が影響している場合が多いのです。」、「伝統密教の修行を重ねた僧侶が、不運・不幸の原因を鑑定します。」、「個人個人に合わせた解決方法を見いだし、自信と責任をもって救いを約束します!」、「悪霊はらい、悪行断ち、怨霊返し、霊障はずし、因縁ほどき、病魔調伏、厄災消滅、憑き物落とし」、「決め手は霊能僧侶の神変加持力のパワー」、「当院僧侶は、真言密教覚王院秘流の霊能資格を相承して」おり、「法によって未来予知、原因解明できる者であり、み仏の慈悲エネルギーを法力によって体現放射できるものであり、み仏の、お大師様の知恵を代弁できる者」、「鑑定料三千円」、「電話予約制」等と記載して広告していた。

(二) 被告乙野寺の各末寺においては、(一)のチラシを見た相談者から電話を受けると、電話受け担当者が、「電話受けの手引き」等のマニュアルに則り、相談者の住所、氏名、悩みの内容、家族の関係等を詳しく聞き出し、「相談者リスト」と呼ばれる相談申込書を作成して、相談担当の僧侶に割り当てる。

「電話受けの手引き」等のマニュアルには、確実に相談者を来院させるための応対パターン例や、電話受け担当者の考課が成約率と来院率で行われること等が記載されていた。

(三) 相談者に最初に面談する僧侶は、「入信教師」と呼ばれる者である。被告乙野寺においては、僧侶は、「入信教師」、「導師」、「住職」の順に地位が上がっていき、相談者に対して行う鑑定や修行内容について、基本的には次のような役割分担がされていた。

(1) まず、「入信教師」は、「鬼業即知法」と呼ばれる、姓名の字画から因縁を導き出すという手引き書等により、相談内容と関係のある因縁、過去の業等を相談者に示す。そして、悩みや災難から逃れるためには、その原因となっている霊(水子霊、変死霊、先祖霊等)の供養をしなければならない等と言って供養料を出すように要求し、さらに、「導師」が行う「浄霊修法会」と呼ばれる三日間の儀式への参加を約束させ、「導師」に引継ぎをする。

(2) 次に、「導師」は、「浄霊修法会」に参加した相談者に対し、家系図を書かせてそれをもとに水子や変死者の因縁の話をしたり、インクで文字を書いた紙を水に浮かべてそのにじみ具合で霊の状態を判断するという「流水潅頂」等を行い、供養の必要な霊を指摘し、「荒神祭祀」六五万円、「水子供養」一〇〇万円、「変死者犠牲霊供養」一〇〇万円、「三界万霊供養」一〇〇万円等の供養料を要求する。

(3) その後も相談者を週に一度寺に通わせて、「住職」が個人面談をし、さらに霊の供養が必要であると説いて供養料を要求する。

(4) 被告乙野寺においては、上記の三段階を順に「ワン」、「ツー」、「スリー」と呼び、それぞれの時点において供養料を提供させることができた場合を、「ワン発生」、「ツー発生」等と呼んでいた。

(5) また、供養料の他に、「護符」と呼ばれるチラシを一枚二円で数千枚から数万枚買い取らせ、「護符修行」と称して一般家庭に配布させていた。

(四)(1) 被告乙野寺においては、僧侶になるために約一週間から三か月程度の研修が行われるが、そこでは、被告甲田、被告戊原、被告丙川等の役職者により、「鬼業即知法」の指導や、如何にして相談者を入信させ、供養料を出させるかについての講義が行われていた。

(2) 被告甲田は、研修生の指導に用いるために、経験のある僧侶に「入信の組付けとして」と題するマニュアルを作成させていた。

その記載内容は、「とにかく話させる。その中で、本人の性格であるとか環境であるとか、経済的状態まで感じとること」、「うちは本気の寺だから、本当のことしか言いません。〇〇さん、今のままでは、反対、反対の方向に行ってしまう。厳しいですね。」「今はまだよい方。もっと悪化は余儀なくされるなー。」、「あなたが本気でよくなりたいと思っているなら、救う手だては無い訳ではない。」、「<1>なるほどと納得させる。<2>この先生、すごいなと思わせる。<3>相談者は教師の頭のてっぺんから足のつま先まで見ている。ぬかるな、甘く見られるな。<4>慈悲ゆえの厳しさ。<5>このまま放っておくと、こうなります。<6>だけど、仏縁頂くことで、バラ色に未来は開かれますと夢をふくらませる。」、「<1>せっかく来たのだから、お加持をしてあげましょう。これでも因縁はわかるから。<2>何か感じた? 感じた→うん、まだ脈があるね。感じない→やっぱりね。相当重いね。これは難しい。重いね。<3>どうする? <4>何とかしてみる? 難しいけどね。霊的に悪すぎる……。これだけ重かったら、やることなすこと裏目裏目に出るのは当たり前。」、「これ以上落ちないよう、歯止めをかけて、みそぎ払いをして環境を浄化しよう。あなたが死のうと生きようと、ずっと祈り続けまつり上げなければダメ。」、「ここまではガンバロウ(その人の精一杯を指示。いくらいくら。)」、「ではそれでやってみよう。あとは修行でカバーしよう。」、「先祖献灯も含め、五六五万がゴール」等であり、入信教師が相談者を如何にして入信させ、供養料を出させるかについて、基本的な姿勢や具体的な応対方法、相談者に支払わせるべき供養料の目標額が示されているものであった。

同種のマニュアルとして、被告甲田の指示により、「入信教化トーク例」、「入信担当心得」「入信相談の手引き」、「入信引導トーク例」、「個人鑑定教化の流れとトーク集」が作られていた。

(3) また、これらのほかにも、研修生や僧侶の間では、「トーク集」と称するマニュアルが存在していた。

その記載内容は、例えば、「おじいさんが身内とうまくいかない」相談に対するトークとして、「辛いね、苦しいね、楽になろう。恨まれたり父親としてみられないということは自分にも原因があるよ。父娘仲良くできるようにしようね。でもおじいちゃんの因縁では水子・不成仏もいるし、うまく行かないんだよ。仲良く円満に暮らせるように私にまかせなさい。」、「母親の病気」の相談に対するトークとして、「いいことに気がついたね。自殺だね。自分だけだったらいいけど、孫を持って行くよ。実の母だから治してあげて晩年を幸せにしてあげるかい。これは霊障だから医者でも治らないよ。しんどいけど、治したい気持ちがあるか? まだお母さんが止めているからいいけど、今度はあなただよ。」、「仕事、人間関係がうまくいかない」との相談に対するトークとして、「若い人のこういう悩みって多いね。みんなお寺に来てがんばっているよ。あなたはいいもの持っているけどじゃまされて発揮できないね。仕事も人間関係もいいところまで行ってだめになる。働けど働けどの人生になるよ。うだつが上がらない人生だね。ここで止めないとね。時間もかかるしお金もかかるけど、仏様にご縁して人生変えよう。今やらないと、四〇、五〇才ごろになってこんなはずではなかったと思って、またこういうところに来ることになるよ。それでは遅いんだよ。今やりなさい。うだつが上がらない人生で終わるか、これからの七〇年笑って過ごすかのせとぎわだね。どうする?」「六五万円が無理の場合」のトークとして「・洋服をこの一年間買わないとか。・お肉をメザシに代えるとか。・パートなら時間を長くするとか。・自分が楽していて願いを叶えてもらおうとは甘いです。・ぬるま湯につかっていて幸福になるなんてことはあり得ないことです。・努力と何かを犠牲にしなさい。・六五〇万と言っているのではないよ。高く買ったものは大事にするだろう。・もとをとろうという気持ちにならないだろう。」等と様々な悩みや相談のパターン別に、入信教師が話す言葉の例が具体的に示されていた。

(4) また、研修においては、「ロールプレイング」と呼ばれる模擬相談の訓練が行われていた。

(5) 被告甲田は、自ら、各末寺に「朝座」と称する講義をビデオで放送し、その中で、「初手が大事。真剣な振りで聞いてやる。お加持が終わった後、“かなう、大丈夫”の一言を。続けて、“ただし、このままではだめ、なすべきことをしないとだめ”と言い、供養をさせる。」、「相手の悩みを利用せよ。」「有財の人たちは、もうちょっとやればいいですよという方便が一番大事。無財の人たちはいい加減で、これ以上運命が下がりたくないという恐怖心で来ているわけだから、本当にこのままではえらいことになるという話をしなければ本気で立ち上がろうとしない。」、「(相談者)リスト一本当たり五〇万円、二〇〇本を目標。経営上の数値は一億が絶対条件。」、「リスト数は、まいた護符の枚数が背景になっている。一〇〇本リストが欲しければ二〇〇万枚まけばいいわけです。」、「(相談者)全員に一万枚の護符修行を。」等と相談者に供養料を支払わせる具体的な方法や目標額、新たな相談者を集める方法を教えていた。

(五) 被告乙野寺においては、各末寺と僧侶各人に対し、毎月達成すべき入信者数、供養料の総額等のノルマを設定していた。そして、「入信教師」別、「導師」別、「道場」別に、入信率、獲得した供養料の累計等により成績をつけた順位表を配布し、成績の優秀な者を表彰していた。また、僧侶は、位階に応じて給料が支給されていた。

そのため、被告乙野寺の僧侶らは、より多くの入信者と供養料を獲得しようと競い合っていた。

2  《証拠略》によれば、別紙被害明細表記載の事実が認められる。

三  霊視鑑定の違法性について(請求原因3)

前記認定のとおり、被告乙野寺は、人の不幸や悩みの原因となっている因縁や霊障を見極めて取り除くことができる旨の広告をし、被告乙野寺の僧侶は、広告を見て相談に来た原告らに対し、「水子霊」や「変死霊」が不幸や悩みの原因であると断言し、「一日も早く供養をしないとますます悪くなる。」等と言って、原告らに、供養をしさえすれば不幸や悩みから逃れられると信じさせて、供養料名目で金銭を支払わせたものである。

そして、前記認定のとおり、被告乙野寺においては、約一週間から三か月程度の研修を経ただけで僧侶となることができ、その研修内容は、もっぱら、相談者の不安な心理状態に乗じて供養料を支払わせるための話術や技法の伝授であること、広告を見て電話をかけてきた相談者を確実に来寺させるための手法や相談者に供養料を払わせるためのトーク例を記載した各種のマニュアルが存在すること、各僧侶や各末寺には毎月達成すべき供養料のノルマが課せられ、集めた供養料等により成績がつけられ、寺内部での位階及び給料に反映するシステムとなっていたこと、各僧侶や各末寺は、成績を上げるために、より多くの供養料を獲得できるよう競い合っていたこと及び被告乙野寺の僧侶であった者の中に、因縁や霊障を見極める能力がないことを自ら認めている者がいることからすれば、被告乙野寺の僧侶らは、因縁や霊障を見極める特殊な能力は無く、ただ、供養料獲得のマニュアルやシステムに則って、執拗に因縁や霊障の恐ろしさを説いて原告らを不安に陥れ、供養料を支払いさえすれば不幸や悩みから逃れられると誤信した原告らに供養料名目で金銭を支払わせていたものと認めるのが相当であり、これは、詐欺行為として違法というべきである。

四  損害について(請求原因4)

前記認定事実及び弁論の全趣旨によれば、原告らが前記の詐欺行為により被った財産的損害は、別紙被害明細表の各支払金額(別紙請求債権一覧表の財産上の損害欄記載の金額)と本訴訟追行のための弁護士費用として上記各支払金額の一割に当たる金額(別紙請求債権一覧表の弁護士費用欄記載の金額)との合計額(別紙認容額一覧表の認容額欄記載の金額)であると認めるのが相当である。

ところで、原告らは、慰謝料の請求もしているが、前記認定の本件事実関係のもとにおいては、上記のとおりの財産的損害の賠償が認められる以上、精神的損害も一応回復されたものとみるのが相当であるから、原告らの慰謝料の請求は理由がない。

五  被告らの不法行為責任について(請求原因5)

1  前記認定(別紙被害明細表)のとおり、被告丙田は原告丁山花子及び原告戊川松子に対し、被告丁野は原告丁山花子及び原告甲本竹子に対し、被告戊山は、原告乙沢梅子に対し、被告甲山は原告丁山花子及び原告丙林春子に対し、被告乙川は原告戊川松子に対し、被告丙原は原告丁谷夏子に対し、被告丁田は原告戊海秋子に対し、被告戊野は原告甲村冬子に対し、被告甲原は原告乙石夏夫に対し、被告乙田は原告丙内一江に対し、それぞれ、被告乙野寺の僧侶として、違法な詐欺行為をしたものであるから、それぞれの原告が被った損害につき賠償責任を負う(被告丙田と被告丁野と被告甲山は原告丁山花子に対し、被告丙田と被告乙川は原告戊川松子に対し、被告戊田と被告乙田は原告丙内一江に対し、被告戊田と被告戊山は原告乙沢梅子に対し、それぞれ共同して不法行為を行ったものであるから、それぞれの原告が被った損害につき、連帯して賠償責任を負う)。

2  前記のとおり、被告甲田は被告乙山寺及び被告乙野寺を支配統括する者であること、被告戊原及び被告丙川はそれぞれ被告乙野寺及び被告乙山寺の代表役員であること並びに被告丁川及び被告乙原は被告乙山寺の役職者であることに争いはなく、同人らが中心となって被告乙山寺及び被告乙野寺の運営に当たっていたこと及び前記のとおり、僧侶養成のための研修において、被告甲田、被告戊原、被告丙川等の役職者により、「鬼業即知法」の指導や、いかにして相談者を入信させ、供養料を出させるかについての講義が行われていたことからすれば、被告甲田、被告戊原、被告丙川、被告丁川及び被告乙原は、共同して、前記の霊視鑑定のシステムを企画、推進し、前記1の被告らに違法な詐欺行為をさせていたと認められるから、原告らが被った損害につき、前記1の被告らと共に、連帯して賠償責任を負う(民法七一九条)。

3  争いのない事実及び《証拠略》によれば、被告乙山寺と被告乙野寺はいずれも被告甲田が実質上の代表者として支配統括する団体であり、被告乙野寺は被告乙山寺の確立したシステムを承継、発展させたものにすぎず、被告乙山寺及び被告乙野寺の役職者らの間でも被告乙山寺と被告乙野寺は区別されることなく一つの「教団」として認識されていることが認められ、これらの事実からすれば、被告乙山寺は、被告乙野寺と実質上同一のものと解するのが相当である。

そして、被告乙野寺及び被告乙山寺は、前記1及び3の被告らを使用していたものであるから、原告らが被った損害につき賠償責任(民法七一五条)を負う。

六  被告らの主張について

1  被告らは、被告乙山寺は平成五年三月八日以降、各末寺において布教活動を行っていない旨主張するが、前記のとおり、被告乙山寺は、被告乙野寺と実質上同一のものと解するのが相当であるから、この主張は結論を左右しない。

2  また、被告らは、原告らの主張は真言密教に対する知識のないことに起因する独自の見解であって、被告乙野寺の僧侶は、厳しい修行を日夜継続して加持祈祷の能力を身につけており、霊的な障害について感知することができる旨主張するが、前記認定のとおり、被告乙野寺においては、一週間から三か月程度の研修を経るだけで僧侶になることができ、トーク集等のマニュアルが存在することに照らせば、被告らの主張は採り得ない。

3  さらに、被告らは、原告らは真言密教の教義を理解して信仰をし、供養をする気になって供養料等を支払ったものであるから、詐欺、脅迫にはあたらない旨主張する。

しかし、前記認定のとおり、原告らは、いずれも、最初の相談時又はそれから日を置かずして、数十万から数百万円の金員を支払っているが、そのような高額の金員を布施として出すことは通常考え難いこと(被告戊原も、「『捨身供養』(布施)はそう簡単にできるものではない」と上申書において述べている。)及び前記のとおり、被告乙野寺の僧侶が短期間の研修とマニュアルで相談を行っていたことからすれば、原告らが、被告乙野寺の僧侶の言葉から、真言密教の教義を真に理解して布施をしたとは考えられない。

したがって、原告らの主張は採り得ない。

第三  結論

以上により、原告らの本訴請求は、別紙認容額一覧表の各原告に対応する被告欄の被告らに対し、連帯して、認容額欄の金員及びこれに対する別紙請求債権一覧表の遅延損害金起算日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による金員の支払を求める限度において理由があるからこれを認容し、その余は失当であるからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民訴法六四条ただし書、六一条を、仮執行宣言につき同法二五九条一項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 中田昭孝 裁判官 村上正敏 裁判官 冨上智子)

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